千の夜をあなたと【完】




「……」


イーヴはとっさにレティに駆け寄ろうとした。

――――しかし。


イーヴの前に男がすっと立ちはだかった。

目を剥くイーヴの前で、男はどういうわけか血に濡れた短剣を床に投げ捨てた。

カランという音とともに短剣が床に転がる。

男はそのままレティを素早く肩へと担ぎ上げ、窓の方へと足早に歩み寄る。


「……レティ!!」


イーヴは叫んだが、男は振り返ることなく窓を開けた。


ふわりと床を蹴り、夜の闇へと姿を消す。

男とともに、レティの姿も闇の中へと消えていく。


イーヴは二人が消えた窓を呆然と見つめていた……。


< 136 / 514 >

この作品をシェア

pagetop