キウイの朝オレンジの夜


 副支部長はやっとドアを閉めて、恐る恐るあたしに近づく。

「・・・じゃあ何でそんなに凹んでるの?ちょっと、風邪引くわよ。2月戦だってのに、稼ぎ頭が風邪とか止めてよね」

 ほら、とにかく事務所に入りなさい、と腕に手をかけて引っ張りあげられる。

 あたしより小さい副支部長は、器も大きければ度胸もある人なのだ。

 あたしはつい涙ぐむ。

「ううう・・・宮田さーん・・・」

「うわあ、今度は泣くの!?もう何なのよ~!!」

 事務所に引っ張り込まれた。

 誰も居なかった。そりゃそうか、夜の9時前だ。

 あたしは自席によろよろとたどり着き、だーっと涙を垂れ流しにしながら言った。

「稲葉支部長に惚れてるって気付いたああああああ~!!!」

 宮田副支部長は、叫ぶ。

「それがどうした!?」

「はい?!!」

 あたしは思わず小さな彼女を仰ぎ見た。それがどうしたって、何だ!?一大事じゃないの!

 宮田副支部長は、もう、面倒臭いわ~と言いながら華麗な手つきであたしにティッシュを放った。

< 128 / 241 >

この作品をシェア

pagetop