キウイの朝オレンジの夜


 褒美は拒否出来るのだ。貰える資格を手にしてから断るなら格好もいいが、やれもしないくせにプライドだけをさらすな、ってこと。

 あたしはそれはそうだと思う。

 そして、ご褒美は有難く受け取る主義だ。

 この記念月の優積者だけを集めて支社長やらお偉いさん方と温泉旅行が計画されていた。

 今のところ、うちの支部からこれに参加出来るのはあたしとベテランの夕波さんだけ。

 営業職員の参加人数で上司も参加出来るかどうかが変わる。また二人しか出来てないうちの支部の上司2名は残念ながら不参加だ。

 あたしは前の営業部の同期も参加が確定してるので、楽しみにしていた。稲葉さんもいないことだし、温泉でゆっくり体を休めたい。

 副支部長と笑っていたら、後ろから明るい声が飛んで、あたし達は固まった。

「神野は旅行決定だな。おめでとう」


 ・・・稲葉支部長、いつの間にお帰りに??

 支部長席と副支部長席は並んでいるので、上司との対話は稲葉さんが不在の時を狙って副支部長にお願いしていたのだ。

 あらら・・・帰ってきてしまったのね~・・・。

 副支部長を見詰めて小さく深呼吸する。彼女はあたしを見ないようにして、支部長に笑顔を向けた。

「――――――お帰りなさい、稲葉支部長。早かったですね」


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