キウイの朝オレンジの夜


「研修で、出張。君は、支社に用?」

「ええと・・・はい。そうなんです、今日締め切りで、飛び込みを」

 ああ、と頷いて楠本さんは格好良く笑う。その無邪気な笑顔に印象が変わってハッとする。

 広報に載っているのは真面目な顔が多かった。それでも美形だと人気があったけど、笑うとえらくやんちゃな印象が出てくるんだなあ~。それもいいなあ~・・・。

「ぎりぎりの飛び込みか、それはお疲れ様」

「いえいえ、仕事が遅いもので・・・」

 何とか呼吸を整える。周りにいたOLさん達の視線を感じた。

 ・・・この人と居ると、無駄に目立つな。

 あたしはコーヒー選びに戻った。それを見ていたらしい楠本さんが、なあ、と声をかける。

「・・・はい?」

 振り返ったあたしに、伝説の元スーパー営業は悩殺の笑顔を見せた。

「カフェインが必要なら、お茶しないか?」

 気絶しなかったあたしを褒めてやりたい。そんな格好良さだった。

 気がつくとあたしは近くのカフェで楠本さんと向かい合っていた。何故!?記憶にないんだけど、ここに来るまでの!?



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