キウイの朝オレンジの夜

 雪だ酒だラブホテルだ。



 居酒屋は混んでいた。

 寒いし、雪も降ってきたし、夜の7時過ぎ。あたしはカウンターに席を見つけ、そこに滑り込む。

 一人で飲むのはこれが楽だ。一人席なら、大体どこでも空いている。

「あらあ、久しぶりじゃなーい。玉ちゃん元気してた?」

 店のおばさんが笑顔で突き出しを渡してくれる。

 会社にも近いこの居酒屋は、よく光との待ち合わせにも使っていた。光がここで飲んでいるところにいつでも遅刻気味のあたしが飛び込んできたものだった。

 光と別れてから一度も来てなかったことに気がついた。

「お久しぶりです。生、下さい」

 微笑むのは難しかったけど、何とか口元は上げて注文する。あいよ!と威勢のいい返事を聞いていると、ホッとして肩の力が抜けてきたのが判った。ついでにと眉間の皺も指の腹で伸ばしておく。

 賑やかな団体が入っているらしく、座敷が騒がしい。その喧騒の中にいると頭を空っぽに出来て寛げた。

 今のあたしには、何も考えないでいい時間が必要なんだな・・・。

 小皿を3品ほど頼み、ビールの後は焼酎に変えて少しずつ食べた。飲む、食べる、噛む、飲み込む、飲む、食べる、また噛む・・・と繰り返していたら、気持ちも落ち着いて少し頭が動き出したようだった。

 あたしがそうやって一人で自分を調節している間に時は流れ、時計を見ると10時近かった。

「・・・あれえ?もう、こんなじ、かん・・・?」

 口に出してみたら言葉もちゃんと喋れずでビックリした。あらまあ、あたしったら酔っ払ってる。舌がうまく動かねーよ。


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