ペーパースカイ【完結】
〈k〉輪子:ファミリー
苺の彼氏は、十分も経たないうちに病室から出て来た。

そして私やお父さんには目もくれず、黙って足早に立ち去って行った。

驚いて、思わずお父さんと顔を見合わせ、慌てて病室に戻ると。

苺は、泣いていた。

かなり派手に、泣いていた。

それなのに、私と目が合った瞬間、声を立てて笑った。

「あはははは~ぁ!!…あ~あ、…おかしい」

「…どしたの苺。彼氏、なんで帰っちゃったの?」

「えっとねぇ、今、もう別れたから」

「え!?なんで!?」

ティッシュで鼻をかみながら、苺は答えた。

「決まってるじゃんっ!またニセモノの王子様だったからだよぅ!!

…あ~あ。

…やっぱあたしって、アタマ悪いのかなぁ?ね、輪子ちん」

なんだか、さっきまでの苺とは別人みたいに、嘘やヤセ我慢じゃない本当の意味で、

ケロリと笑ってる。

だから私は。

「そうだってば。もう十年も前から私、言ってるでしょ?

男運じゃなくって、悪いのはイチゴアタマだって」

いつものように、答えてみた。

「やっぱそーかぁ~!!輪子ってば、あたしよりもあたしの事

よく知ってんだね」

「まぁね」

そりゃあそうよ。

愛してるからね。
< 109 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop