ペーパースカイ【完結】
# 5 憧子
ぷらぷらとつないだ手を軽く振り

どこに行っても混んでいるだろうからとやって来た山下公園をのんびり歩いていたら

突然芳明に

「憧子ってお母さんのこと、あんまり好きじゃないの?」

と聞かれた。

「なんでそう思うの?」

と内心ドキリとしながら質問で返すと

「なんとなく。他の家族の人たちに対してより、距離置いてるような気がして…あ」

ソフトクリームだ。食う?なんて言葉を続けて笑うから、思わずぺこんと私は頷いた。

結構行列ができている。一番後ろについて、私は言った。

「別に嫌いじゃないけど…なんか苦手なとこはあるかな…」

「そうなんだ。かわいらしいお母さんなのに」

「え!かわいらしい…?」

「うん」

ケロッと言う横顔を、私は思わずガン見してしまった。

視線に気づいた芳明が、「ん?」というように首をちょっと傾げる。

「あんな変な初対面だったのに?」

「ああ、あれは一瞬びっくりしたけどさ」

「…あんななんでもズケズケ言うママがかわいい?」

列がちょっとずつ動き出す。

「憧子のこと、可愛くてしょうがないんだなって感じだったよ」

「………」

芳明って、なんか思ってたよりずっとオトナ、だな…。

私は…私はやっぱりガキなんだな…。

「やっぱ混んでるなーここも。今日天気いいしな」

「うん…」

なんだか胸がズキンとした。

やっと買えたソフトクリームを「はい」と手渡された時、

(この人と、一生一緒にいられたらいいのに)

なんとなくそう思った。







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