ペーパースカイ【完結】
〈9〉苺:バッド・モーニング
最近のあたし。

目が覚めるたび、心がいつも飛び跳ねてる。

まるで、羽がはえたみたい。

『今日も放課後、山中君に会えるんだ』

そう思うだけで、切ないくらい、苦しいくらいにうれしくなっちゃう。

いそいそと学校に行く仕度をする。

鏡の前で制服のリボンを結んでいたら、突然ママが部屋に入ってきた。

珍しい。

いつもはこんな時間に起きてくる事なんて、ないのに。

「どうしたの?ママ。早いね」

面と向かって話すのなんて、久しぶり。

なんだか変な感じ。

人見知り、してしまう。

「んー…せっかく目が覚めたから、直接渡そうと思って」

「何を?」

「これ。…あんたまた最近、彼氏できたでしょう」

え!?

「…なんでわかるの?」

「わかるわよ…ちゃんとこれ、使いなさいね」

「……………」

「もう、中絶なんてしたくないでしょ?」

「……うん」

私はママの手から、黙ってその箱を受け取った。

「じゃあね、いってらっしゃい。ママはもう少し寝るわ」

「……うん……」

飛び跳ねていた心が、急にしょんぼり沈んでいく。
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