ペーパースカイ【完結】
〈d〉輪子:ライク・ア・チャイルド
一哉に電話をするのは、なんとなくためらっている。

一哉と知り合った場所は、私が会社帰りに同僚の子達と、

割とよく飲みに行く小さい居酒屋。

そこの常連同士という縁で、なんとなく仲良くなった同い年の男の子。

あっちもあっちで、会社の友達や、学生の頃の友達なんかとよく飲みに来ていた。

何度となく顔を合わせるうちに、

「やーまた会いましたね~」

「ども、お疲れっす~」

「ままま、とりあえず一杯」

といったノリで、ものすごく酔っ払いらしい知り合い方をした。

でも、二人だけで飲んだり、ましてや外で会ったりした事は一度もない。

お互い酔ってる状態でしか話した事がない。

携帯の番号とメアドを交換したのはおぼえてるけど、

今までどちらも電話をかけたりメールを送ったりなんてした事なかった。

たぶん、私があの店に来ない理由を同僚の誰かからにでも聞いたんだろう。

お母さんが亡くなった後は一度も行っていないから。
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