ペーパースカイ【完結】
〈2〉苺:輪子のこと
輪子の淹れてくれるコーヒーにはいつも、微かに甘い、安らげる粉末が混ざってるような気がする。

輪子はあたしの一番好きな女の子。

二番も三番もその次も、全部。
全部全部、あたしの「大好き」は、輪子でいっぱいなんだ。


中学校一年の身体測定の日。

輪子の後姿を見た瞬間、あたしは
あたしの「憧れ」がすぐそこにいる!って思った。

すららっと手足が長くて、背も高くて、誰よりも姿勢がよくって。
おまけにショートカットの襟足が、ドキドキするくらい、色っぽかったんだ。

吸い込まれるみたく、話しかけてしまった。
あたしのゴテゴテに派手な顔のパーツとは裏腹に、振り向いた輪子の顔はとてもクールで涼しげに見えた。

切れ長で、墨色の瞳。
すっと伸びた高い鼻。
薄くて小さな唇。

話し声もちょっとだけハスキーで、トーンがとても落ち着いていた。

あたしのキャンキャン子犬が鳴くような話し声とは、まったく違ってた。

あたしは一刻も早く、輪子の友達になりたかった。

一目ボレって同性に対しても起こりうることなんだって、確信した。
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