金色の師弟

すかさずアデルはルイの右腕を掴むと、自身の身体へと引き寄せる。

そして空いている右手でルイの顎を掴み、軽く持ち上げた。


「……キスでもしてくれるかと、期待したんだが」


「……っし、し、しません!しませんよ、するわけないじゃないですか!!」

甘い囁きに、ルイは林檎のように真っ赤になる。

彼女はいままで騎士団に入団するべく、修業に明け暮れた毎日を送っていた。
なので時折悪ふざけのようにアデルにからかわれても、どう対応していいのかわからない。

アデルもその反応が面白くてちょっかいを出すのだが、ルイはそのことに気付けていない。

「いつもいつもそうやって人のことをからかって……だから貴方は浮いた噂が耐えないんですよ」

アデルはその容姿と実力のため、周囲の女性が放ってはおかない。

しかも彼は、それらの女性に対して紳士的な態度を見せる。
それが女性の目には好意的と映り、女たちはアデルに好かれていると勘違いしてしまうのだ。

そして、その勘違いを解くという面倒な真似を、アデルはわざわざしようとは思っていない。
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