金色の師弟

しかしこの時、ルイは気付いていなかった。

ライラの態度の悪さには、ルイに触れるこの男、アデルに原因があったことを。

「……いい加減にしろ」

眉間に深くしわを刻み、低く唸るようにライラはアデルの手首を掴んだ。

機嫌の悪さが最高潮である。

「ライラ……?」

普段の仏頂面ではなく、苛立ちを感じていると気付いたルイは、戸惑いながらライラを見つめる。

アデルはルイから手を離すと、すぐにライラの手を振り払った。

「悪いな。あまり手には触られたくないんだ」

アデルの声にも、不快感が混じっている。

弓が武器のアデルとしては、強い力で手を掴まれることは不快でしかない。

だがそれ以上にアデルは、ライラの中にある自分に向けられた敵意のようなものを敏感に感じ取っていた。

理由はおそらく……ルイ。

ライラはルイに、好意を持っている。
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