金色の師弟

胸を痛めるのは、アデルが自分をエルクに重ねて、辛さを共感してしまったから。
アデルは、変わった。
それは人間としていい方向に。

「すま、ない……」

謝罪など無意味だとわかっていながらも、エルクは弱々しく呟いた。
好きな人を他の男に取られる。
そんな思いを、アデルにまでしてほしくはない。
だから、エルクは声を絞りだす。

「お前は、幸せに、なるんだ」

ルイの手を、掴んで離すな。
その言葉にアデルは目を丸くすると、困ったように眉を潜めて「はい」と頷いた。
< 353 / 687 >

この作品をシェア

pagetop