金色の師弟

イアンの一喝の後だったため、不満を口にする者はいなかったが、彼らの眉間のしわは深まっていた。

「ライラも、少し黙るんだ」

「……失礼」

悪怯れもなく謝罪を口にし、ライラは口を閉ざした。
沈黙が訪れたことで、ユリアは言葉を探しながら状況を説明する。

「ノルダ砦は五日前に落ちました。ですが、被害は少なく、負傷者は出ましたが死者はおそらく出ておりません」

「死者が……いない?」

「砦を落としたというのにか!?」

上ずった声を上げたのは将軍と騎士団長であった。
ユリアが頷いたことを確認すると、すかさずライラが尋ねた。

「砦の損傷は?」

「え……」

「破壊された箇所や範囲は?記憶している範囲で構わない」

予想外であった問い掛けに、ユリアは目を伏せ記憶を手繰る。

「砦自体の損害も少ないです」

「城壁もか?」

「はい。……その、無血開城だったのです」

無血開城。
その言葉に納得した者は、会議室では少数派であった。
ライラは珍しく笑みを浮かべ、ちらりとルイへ視線を向けた。
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