音無さん

硬い声が、その端正な顔と相成って余計堅苦しく感じる。委員長を見ていると喉元を締められているような、そんな気分になるから不思議だ。

「何、委員長も音無さん知ってるんだ」

香奈が我が意を得たとばかりに進み出ると、冷たい一瞥が返ってくる。
美形が怒ると怖いと言うのを今、実感した。

「……」

「じょ、冗談よ……ねぇ?」

そこで私に話を振らないで欲しい。

「零、そんな怖い顔したらいけないよ」

楽しげに笑う柔らかな声。戸口にいた女子が、にわかに騒ぎ出す。

「新藤君…」

新藤桜。

170の長身と高い腰位置。鼻筋は通っており、唇は薄め。柔らかな栗毛の髪が風に揺れ、涼やかな目元が月形に細められている。
一見したら王子と見まがう風貌を持つ彼女は、正真正銘女生徒だ。

彼女は、何故か委員長とよくつるんでいる。普通なら女子同士のグループに属するものだろうが、ウマが合うのかよく一緒にいるのを見かけた。
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