HERO


例えばここが本当に2055年だったとして、私はなぜ2055年にいるのだろう。



そしてなぜ、梓はロボットとして存在しているのか。



本物の梓は、2055年でいうと64歳。



健在であればまだこの世に存在しているはずだ。




「今はまだお教えできません」



あの少年は確かそんな風に言っていた。



『今はまだ―』ということは、梓は生きているということだろう。




私は。



私はいるのだろうか。

存在しているとすれば、62歳。



未来の私に会えば、梓に会えば、何かわかるだろうか。


漸く息も落ち着き、人気の少ない公園のベンチに腰を下ろした。





< 45 / 86 >

この作品をシェア

pagetop