雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「呆れてものも言えない」(3)


 うっかりユイを特別視している事を口走ってしまい、ばれてしまったかと内心焦っていると、ユイは別のところに食いついてきた。


「ねぇ、どうして王子様のクローンを、元々用意してなかったの? クランベールの科学技術ならクローンなんて簡単に作れるでしょ?」


 ユイのニブさに少しホッとしつつ、ロイドは二十五年前にクローンが禁止された事と、その経緯をユイに説明した。

 今、クランベールに人間のクローンはいない。
 表向きは。

 十八年前、つまり禁止された後に生まれたクローン人間が、実はひとりだけ今も生きている。

 当時のロイドはまだ少年だったので、その時の事件に直接関わってはいないが、この事は科学技術局最大の汚点として、今も語り継がれている。

 クローンが生きている事は、科学技術局のトップシークレットなので、決して口外することは出来ない。

 話のついでに見せた、携帯用パワードスーツを折りたたんでいると、ユイがとぼけた事を訊いてきた。

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