雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「素直にいう事を聞くおまえなんて、薄気味悪いぞ」 (2)


「ロイド!」


 大声で名を呼ばれ焦ったが、どういうわけか男は気にかけていない。

 これ以上騒がれてはまずいので、ロイドは指を一本立てて、口に当ててみせた。
 ユイは小さく頷く。
 続いて両手で耳を覆ってみせた。
 ユイは男から手を離し、耳を塞いだ。

 それを確認し、ロイドは足音を忍ばせて、素早く男の後ろに近付いた。

 男の耳元に顔を近付け、一声かける。


「わ」


 囁いただけの声が、喉のマイクロマシンによって大声に変換され、男は文字通り飛び上がって振り向いた。

 本番はこれからだ。

 ユイを連れ去ろうとした事への、個人的な恨みも込めて、ロイドはにっこり微笑むと、思い切り大声で叫んだ。

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