雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 ユイはロイドの胸に顔をすりつけて、しがみつくと、掠れた声でつぶやいた。


「……怖かった……」


 ロイドはユイの震える身体を、しっかり抱きしめると、項垂れて詫びた。


「悪かった。側にいろと言っておきながら、オレの方が側を離れた」


 ユイの性格を考えると、不用意に側を離れるべきではなかったのだ。
 これほど怖い目に遭わせてしまった事は、自分にも非がある。

 しがみついたままで、ユイは首を振る。


「あなたは悪くない。勝手に研究室を出た私が悪いの。ローザンも引き止めてくれたのに。ごめんなさい。もう勝手な事しないから」


 そう言ってユイは、更にしがみついてきた。

 ユイの方からしがみついてきた事も、これほど素直に反省して謝った事も初めてで、ロイドは嬉しくなり、思わずクスリと笑いを漏らした。

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