雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「それでいい」(2)

 彼女が冗談のような事を言うのを、初めて聞いた。

 ロイドは見た事もないが、恋人の前では彼女も笑顔を見せたりするのだろう。
これほどの美女だ。
 笑顔は輝くほど美しいに違いない。

 想像すると、ほんの少しだけ苦手意識が和らいだ。

 ロイドは少し笑ってフェティに告げる。


「わかった。近いうちに会いに行ってみる。知らせてくれてありがとう」


 ロイドが彼女に笑顔を向ける事も珍しいので、フェティは少し面食らったような表情で「失礼します」と言い、電話を切った。

 電話を終えてすぐに、ロイドはメインコンピュータを落とした。
 窓の戸締まりを確認し、研究室のセキュリティを外出モードに切り替える。
 これでロイド以外の人間は、誰も出入りできなくなる。

 どうせ今日は、もう仕事をする気はない。

 研究室に施錠して、ロイドは自室に戻った。
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