雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「とことんオレの言う事を聞かない奴だな」(3)

 そう言ってロイドは立ち上がり、ユイの横に移動した。
 見上げるユイの頬に手を添え、身を屈めて顔を覗き込んだ。
 そしてニヤリと笑う。


「だが、今度何か言う時は覚悟しろよ。こっちの歯止めは外れかかっているからな」


 そして、ユイの唇に軽く口づけると、元いたコンピュータの前に戻った。


 胸の奥にため込んでいたものを吐き出して、随分と心が軽くなった。

 時間がない事に変わりはない。
 不安も焦りも消えたわけではない。
 状況は何ひとつ変わっていないのに、心は妙に清々しい。

 きっと自らの手で、ユイを不幸にしてしまう心配がなくなったからだろう。

 考えていた事は全て話した。
 けれど一番言いたい事は、言っていない。
 ニブイユイは、これだけ言っても全く気付いていないかもしれない。

 それを思うと少し切ない気もするが、ニッポンに帰るなら知らないままの方がいいだろう。
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