雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「オレのキスは寝てしまうほど退屈だとでも言うのか!」(2)

 不審に思って目を開き、ロイドは至近距離でユイの顔を覗き込んだ。

 明らかに眠っている。

 これからという時に、眠ってしまう女は初めてだ。
 こんな予想外はいらない。


 愕然とすると同時に、言いようのない憤りが湧いてきて、

「オレのキスは寝てしまうほど退屈だとでも言うのか!」

と言いながら、ユイの額を叩いた。


 途端にユイはパッチリと目を開いた。
 ロイドは身体を離し、ユイの両脇に手をついて、上から睨みつけた。

 ユイはまだ、ぼんやりとロイドを見つめている。


「起きろ」


 そう言って、もう一度額を叩くと、ロイドは身体を起こし、ソファの背にもたれ腕を組んだ。

< 268 / 374 >

この作品をシェア

pagetop