雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「こんな予想外はいらない」(2)

「寛大なご処置、痛み入ります」

 ロイドはそう言うと、顔を上げた。殿下はロイドの顔を見て、益々おもしろそうにクスクス笑う。


「それにしても、話には聞いていたけど、ロイドって相当ユイの事が気に入ってるんだね。こんなに取り乱したの、初めて見たよ」


 確かに我ながら冷静さを欠いていた。
 思いも寄らないユイの言動に、アドレナリンが一ヶ月分くらい一気に放出されたような気がする。

 少しバツが悪くて振り向くと、ユイはまだ眉をひそめて殿下を睨んでいた。

 少しくらいは反省しろ。

 いくら正論でも、相手は王族だ。
 言っていい事、やっていい事には限度がある。
 それを踏み越えるには、それなりの覚悟が必要だという事を、ユイは分かっていない。

 ロイドは無言でユイを睨んだ。
 ユイもロイドの意図するところを察したらしく、殿下を見据えて口を開いた。

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