雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「確固たる決意を持って臨んでもらいたい」(1)

 部屋に入った途端、緊張の糸が切れて、ロイドは縋るようにユイを抱きしめた。


「な、何?」


 驚いたように尋ねるユイに、ロイドはため息を吐き出しながらつぶやく。


「肝が冷えたぞ、おまえ」
「あ?」


 不思議そうな声を漏らしたあと、ユイは少し笑って問いかけた。


「王子様を叩いた事?」
「本当なら、タダじゃ済まないところだぞ。殿下の懐の広さに感謝しろ」


 そう言ってロイドは身体を離すと、ユイの額を軽く叩いた。

 ユイは顔を覗き込みながら、からかうように言う。

< 305 / 374 >

この作品をシェア

pagetop