雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜
 そのまま風呂に向かい、戻って来てソファに座り、ぼんやり考えた。

 本当はユイが指摘した通り、迷っている。

 ユイがニッポンに帰らないと言ったら困るというより、自分が帰したくなくなるような気がして。

 殿下が見つかったから、ユイはもう身代わりをしなくていい。
 ユイがユイとしていられるなら、何も帰さなくてもいいのではないか。
 安易にそんな事を考えてしまう。

 帰してしまったら、三十年後か、いつの事になるか分からない時空移動装置の完成を待たなければ、ユイに会えなくなってしまう。

 もう一度ユイに会うために、時空移動装置はなんとしても完成したい。
 だが、何年もかかったとしたら、その時ユイは自分に会いたいと思っているだろうか。

 かといって、何年かかるか分からないのに、当てのない自分を待って人生を犠牲にしろとは言えない。

 ユイはニッポンに帰ると決めている。
 だったらロイドのわがままで、引き止める事は出来ない。

 このまま時空移動装置の事も、ロイド自身の想いも告げないまま、わずか一月足らずの、けれど一生分にも匹敵する、楽しく幸せな夢が見られたと思えばいい。

 残り二日、できるだけユイと一緒に、笑って楽しく過ごそう。

 そして最後の夜に、最高の思い出を頂く事にしよう。

 ロイドは立ち上がり、灯りを消して寝室に向かった。

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