雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「思い出なんかいらない!」(3)

 ラヴィル伯爵夫人は貴族たちの中では、珍しくロイドに好意的な方だ。
 以前から王宮内で何度かお会いして、ロイドのマシンに興味を持ったらしく、ロイド自身にも親しく接してくださる。

 だが、なぜ結婚の心配までしているのかわからない。

 陛下はため息混じりに言葉を続ける。


「あの方は貴族たちの間じゃ有名な仲人おばさんなんだよ。おまえも知ってるだろうが、あの方はおまえに対して悪意はないし、単なる世話好きなんだか、おまえを王宮内から追い出したい者たちに焚き付けられたみたいでな。妙な使命感にとらわれて”ご友人の陛下から是非お勧めください”ときた。無下に断るわけにもいかず、一応おまえに話は通す事にしてたんだ。まぁ、おまえが見ず知らずの貴族の娘と結婚するとは思ってなかったけどな」

「はぁ……」


 これまでは一度断れば諦めていた陛下が、ユイとの結婚には引き下がらなかった謎が解けたような気がする。

 陛下が穏やかな表情で問いかけた。

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