雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「……もしかして、惚れたのか?」(1)

 部屋に戻ったロイドは、後ろ手でガラス戸を閉じた。
 そのまま戸に縋って大きくため息をつく。


「まずった……」


 ユイの反応は確かに予想外だった。
 そしてそれは後悔と共に、軽く自信を喪失させるものだった。

 ロイドは俯いたまま、手の先を唇に当てた。


「……オレ、キスは上手いと思ってたんだが……」


 ロイドのキスに、女はみんなうっとりとした。
 怯えられたのは初めてだ。

 ロイドはガラス戸に縋ったまま、ズルズルと腰を落として床に座った。
 立てた両ひざの上に両腕を投げ出し、ぼんやりと中空を見つめる。再び大きなため息が漏れた。

 小鳥ロボットは、どうやら気に入ってもらえたようだ。
 しかしロイド本人は、拒絶されてしまった。

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