雨の日の追憶 〜クランベールに行ってきます 本編ロイド視点〜

「そんなにイヤなのか」(2)

 ロイドはユイの両腕の根元を掴んだ。

「首に掴まれ」


 ユイは腕を伸ばし、ロイドの首の後ろで両手の指を組み合わせた。

 どのくらいここで穴に嵌っていたのかわからない。
 石段の石に熱を奪われたのか、ユイの冷たい手が、ずっと走ってきて少し火照った首に、ひんやりと心地よかった。

 ロイドはユイの背中に両腕を回すと、抱きかかえるようにして一気に穴から引き抜いた。

 二人で同時に安堵の息を吐く。

 よほど安心したのか、ひざの上のユイは身体の力を抜いて、おとなしくロイドに身を任せている。
 冷たかった手も、徐々にぬくもりを取り戻してきた。

 ゆうべも思ったが、ユイは他の女に比べて体温が高い。
 その温かさが妙な安心感を与え、心がゆったりと落ち着いてくる。

 このままもうしばらく、ユイを抱いていたい衝動に駆られる。
 だが、そういうわけにもいかないだろう。
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