元恋人の甘い痛み【完】
「優里」

「ん?何?」

「もし俺が…」


雷牙は私をじっと見据える。


何を言おうとしているのか、全く想像が付かない。


もし俺が…何?


「嫌、いい」

「何よ?途中でやめられたら気持ち悪いじゃない」

「悪い悪い」

「で、何?」

「何もない。こんな所で立ち話して悪かったな。お前が帰るのを見届けてから帰るな」

「…変な人ね」

「何とでも言え」

「明日は休みだから、また月曜日ね。おやすみなさい」

「おやすみ」


此方をじっと見届ける雷牙を背にマンションへと入り、エレベーターに乗り込んだ。


言い掛けた事は何か分からないけれど、何か言いたそうだった。


気になるじゃない。


雷牙の馬鹿。
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