As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
中道は律に一目置いている節があり……



急に、押し黙った。



「中道…。アンタがムカつくのはよく分かるけどさあ、当事者がもういいって言ってんだから……。」



「それ言うなら俺らだって当事者だろ?コイツの伴奏なけりゃ合唱成り立たなかったんだから。」



「…でも…、もう一つの楽譜があったんでしょ?」



「あれは、俺が取りに行った。」



「…は?どこに……?」



「こいつん家。」



「……柚、そうだったの…?」




律の質問に……



私は静かに頷く。




「…アンタもよくもまあ普通に弾きあげたもんねえ。見上げたもんだわ。」



「………。」




「間に合わなかったら…なんて、不安がってたくせに。」



「…うん。それでも……信じてた。」



「…あっそう。いつの間に信頼し合うような間柄になったんだか。」



「……りっちゃん!……茶化さないで。」



「………。いやいや、中道の侠気に感動しただけだから。」



「………。」



「………なあ、誰か知ってる奴……本当にいないの?」



ひどく冷静になった中道が……



ぽつりと呟いた。





「あのさ……」





それまで黙っていた三井くんが……



口を開く。




「…そうやって、中道くんが庇うから……ややこしい事になるんじゃないの?」



「……は?」



「彼氏だっているのに、中道くんがちょいちょいちょっかい出すから…、それが誤解を生んで、こんな事態を招いたり、上原さんだけが傷ついてきた。」




三井くん……?



何言って……。




「……上原……、今の…ホント?」



悲しみに帯びた瞳の中に……



私の姿が、揺らいで見えた。




「や…、やだなあ、三井くん!なーに言ってんの?!私はいつも通りホラ、ピンピンしてるでしょー?」



中道を…責めないで。



「上原さんも。どうしてそこで庇うかなあ…。」


「………。」


「…許せることじゃないよ、確かに。けど過ぎたことだ。ほじくり返して掻き乱すのは……ことを荒立てるだけ。だったら…目の前のことを成功させればいい。やった奴がはらわた煮えくりかえるくらいに、成功させてやれば……十分仕返しになる。」



「………。」





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