As Time Goes By ~僕等のかえりみち~
「やっと泣いた。…ったく愛想笑いばっかしやがって。」



「…………。」



「まあ、…頑張ったな。大丈夫、お前には次がある。」



「…………何よ、人ばっかはげまして…。自分はどうなのよ。」


「……あ?」


「あんたこそ…、野球したいんじゃないの?」



「………。」



啜り泣く私の頭に…、



中道の手が置かれた。



「…俺は…、いーんだよ。言ったろ。自由人目指してるって。」


「…けど…。」



「お前はさ、自分のことだけ考えてろ。人のこと考えてる余裕なんてないはずだ。」



「……ねえ…。」



「…ん?」



「中道は…、泣いたの?野球できなくなった時……。」




「…………。」



中道は……


一瞬だけ上を向いて、それから…、私の顔を覗きこんだ。



「泣かねーよ。お前みたいに泣ければ……もっと違ってたのかな。」



「……泣こうよ、一緒に。」



「…は?バーカ何言って……。」



「…だったら、私が泣くから。中道の分と二人分!」


「…普通そーゆーの、宣言するか?」



「…………。」



「お~い、上原?」




私は涙を堪え切れなくて…


それでも顔を見られたくなくて……



中道の制服のシャツを掴んで……、


顔を…伏せたんだ。



「…しょーもな…。マジで泣いてるし。」




流した涙は二人分。



ただただ黙って頭を撫でる中道の手があたりにも温かくて……




止まらなかった。



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