As Time Goes By ~僕等のかえりみち~







引っ越し業者が結の荷物を跡形もなく持ち去って……。






部屋にはぽつん…、と。




私と結。



二人きりに……なった。



両親が気を利かせて…リビングへと引っ込んでいたからだった。




何を話したらいいのだろう……と悩む私をじっと見つめながら……



結はふふっと小さく笑った。



「2年ちょっと前に…自分で宣言したのにね。おかしいな、全然実感湧かないね。」



「……うん。私も…そうかも。」



「柚を送り出すことはあっても…、その反対って滅多にないから…。どんな感じなんだろう。」



「………。」




言葉が……見つからなかった。




もう……、時間がないのに。




「18年。柚とは離れたこと…なかったね。」



「……うん。」



「楽しかったなぁ…。」



「…うん。」




「ねえ、これからはもっと…楽しいことが待ってるんだよね?」



「…………。」



「仲間と一緒に…、大好きな花に囲まれてさ。自分の好きなことにおもいっきり没頭できるんだよね?そんな幸せって…ないよね。」




「……結……。」




「柚にだけは言うよ。本当はね、ちょっと後悔してる。見栄張って、私ならできるって高を括って…。なのに、このザマ。引っ越しの準備すらできない、度胸もない、ああ…結局私は私なんだなぁって……。」




「…………。」



「…わかってんのよ。言った手前、ちゃんとしなくちゃいけないって。夢を叶えるのに……いつまでも甘えてちゃあいけないって。」




「…………。」
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