*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
「家内と結婚して子供まで作ってから、気付いたのです。ですから妻には逃げられ……いえ、別れることを決めました」
カンナは最早何も言い返せないように顔を青くさせて、両手を前に突き出した。
「わ、分かった。瑠華に気がないことは分かった。だけど、俺に近づかないでくれ」
彼はばたばたと出口に向かっていった。
くすっ
私は喉の奥で声を漏らすと、
「くそガキを騙すなんて、チョロいぜ」
俺に威嚇しようなんて百年早いんだよ。バーカ。
と思わず本音を漏らすと、
「ウチヤマさん!わっるい顔してますね~!♪」
にゅっとカウンターからイシカワ君が顔を出した。
「い、イシカワ君!何で君が!?」
「俺?俺はウチヤマさんが好きだからですよ」
イシカワくんは意地悪そうに笑った。
「ありがたいことだね。君がゲイのフリして私をからかおうとしても、そうはいかないよ?
君に可愛い彼女が居ることを私は知っている。大学時代からの恋人らしいね。
そして『面白い上司が居る』と私のことを話し聞かせてるそうじゃないか」
「な、何故それを!?」
イシカワくんがたじろいだように後ずさり、
「私は何でも知ってる」
と言ってやると、イシカワ君は
「あはは~すみませぇん、俺仕事戻らなきゃ~」
と彼は後ろ向きで後ずさる。