*NOBILE* -Fahrenheit side UCHIYAMA story-
4705室
ここは東京の一等地に建つタワーマンション。
下は6,000万から上は、何十億とするマンションだ。
もちろん私が住んでいるマンションではない。
私はここで“コンシェルジュ”をしている。
聞こえはいいが、ようはマンションの高級管理人だ。
私が想像もできない金持ちの住人たちの要望を聞き、それを適えるのが私の仕事。
ここでの私の存在は空気のようなものだ。
たとえどんなことを知っても知らないふり。
機械のように客の要望を聞き、それを実行するだけ。
人は私をこう呼ぶ。
『便利屋』
しかし彼女だけは私をこう呼んでくれる。
「ウチヤマさん」
私に名前を与えてくれた彼女は私が働くタワーマンション
4705室の住人。
柏木 瑠華だ。