愛し
結局、自転車置き場に着くまで続いたそれにストップをかけたのは遼の一言だった。

「ところで、明後日は何時にどこ行けばいいんだ?」

盛り上がっていたところで話を遮られた為か、陽平は少し不機嫌な声を出している。

今まで律儀にも陽平の話に相槌を打っていたというのに。まあ、内容は頭には入っていないけれど。

そう思ったところで突如陽平が大声を上げた。

《あーっ! やべっ!! 俺、楽しみすぎて待ち合わせ場所とか何も決めてねえ!!》

「……こまめに連絡取ってたんじゃなかったのか?」

《毎晩おやすみメールは送ってたけど、『陽平君も、おやすみなさい☆』で終わってた……》

こいつが『おやすみメール』って…。思わず噴き出しそうになるのを咳払いでごまかす。

電話越しで狼狽えている陽平に、「それなら今日聞けばいいだろ」と言うと途端に明るくなるものだから今度は堪えられなかった。なんでこんなにも見た目と中身が違うのだろう。

ひとしきり笑った後、陽平には待ち合わせ日時が決まったらメールをもらうことにして遼は自転車に跨る。





少し雲行きの怪しい空を見て、明後日はあの赤い傘を返せるだろうかと思いながら。

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