【完】プリンセス
作り笑顔も、本当に顔が固まったんじゃないかってな位に慣れた頃……。





ん?!
心菜……何か変だな。


心菜の異変に気が付いた。


多分、周りから見れば変なところなんて、ちっともないだろう。


だけど、少し見たら、どこがおかしかったのか……わかった。



「心菜さん、挨拶周り、一段落しましたし……ちょっとコッチへ」

「は? まだ残りが……」


残りは、どーでもイイ奴等ばっかだし、大丈夫なんだよ。


次の場所へと向かおうとする心菜の腕を、引っ張って誰も居ない部屋に入った。




何だかゴチャゴチャ言ってるのを無視し、そのへんの椅子に座らし膝まづく俺。

それを見て少し、驚いた表情を見せた。


「はい、足」


手を差し出すと、大きな目を一段と大きく見開いた。


「え?」

「靴擦れでしょ?」


「何で……分かったの?」

「いつも見てますから」


何もしないよりはマシだろう。


そう思った俺は、黒のパンプスを脱がせ、赤く皮の剥けた場所にバンドエードを貼った。


小さく息を吐き、見上げた心菜の顔が赤い事に気が付いた。


「心菜さん? 少し顔赤いですね? 熱……?」


額に手を伸ばした瞬間、はたかれる手。



はっ?!

何……今の?



「大丈夫だから、触らないでっ!」


大きな声で言った後、そっぽを向く。


「あ……すいませーん」


全く気持ちが篭ってない謝り方の俺。



何だよ。
触られるのも嫌ってか?



じゃあ、婚約なんかすんじゃねーよ。

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