こうして僕らは、夢を見る




「お邪魔しまーす」

「えっ!?ちょっと籃君!?勝手に入るな!っておい!翼も!」

「はぁ暑かったぜ。おいクーラー付けろ」

「家政婦じゃねえよ」





私の横を悪びれもなく通る籃君と翼に続き次々と勝手に入る面々。引き留めるが意味を成さない。



そして何故か楓君だけは入ろうとしない。



いや、この対応が正しいんだよ?普通人の家に勝手に入っちゃ駄目なんだから。部屋に入る皆の輪から逸れている楓君。



それどころか一言も話していない。先ほどから一声も聞いてない。ただジーッと扉を見ている。正確に言えば私の家に入ることを躊躇っている様子。





「入らないの?」

「は、はあ!?入れるか!」

「ならココに居る?暑いよ?」

「うっ、」

「ほら。おいで」

「………」





扉を開けて中に入るように託せば渋々と言った感じで入る。楓君は律儀にもお邪魔しますと言った。靴も揃えている。緊張からか礼儀正しく為っている。終始、羞恥で耳が真っ赤。可愛い!






しかし部屋に入ると一変。



口を開け、あんぐり。






ウヨウヨと部屋中を観察するように動いている楓君の瞳。



少し歩けば雑誌が爪先に当たり、また少し歩けば服を踏んづけてしまう。簡単に言えば足の踏み場がない。






「…ち、散らかってねえ?」

「女はこんなもん」

「…そ、そうなのか?」

「うん」

「間違った知識を植え付けるな。これは散らかり過ぎだ」






朔君に咎められた。確かに散らかっている。



さっき棚から落ちた本はそのまま。ファッション雑誌も漫画本も。踏んだら確実に割れるCDも数枚散らばっていて危ない。



フローリングに散らばった服。殆どが仕事用。あと昨日着たパジャマも。洗濯機に入れるのが面倒でまだ洗っていない。



机の上は相変わらずビールの缶と吸い殻が占領している。ホームパーティー後にも見えるけど残念ながら一人宴会。アルコール中毒にでも間違われそう。



呆れるのも無理はない。普通ならこの汚さにドン引きだ。なのに家から出る事なく居座る皆には感心する。傍迷惑だけど。






「おい。烏龍茶」

「なら俺は爽健美茶で」

「……コーラ」

「おね〜さん。俺は珈琲ね」

「何寛いでんの」





突っ立っている2人を余所に4人はリラックスモード全開。



まるで我が家のように寛いでいる。
< 202 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop