Secret Lover's Night 【連載版】
prologue

 ハルの始まり

恋人と上手くいかない。
仕事は順調なのに。

仕事が順調であればあるほど、恋人とは上手くいかない。

嫌いになったわけではない。
けれど、面倒くさい女だと思い始めた。

別れるとなれば、更に面倒くさい。泣き喚かれ、恐ろしいとも言えるべき顔で詰め寄られる。

嗚呼…想像しただけで憂欝になる。


「何暗い顔してんの?」


何て名前の女だったか…
それさえも忘れてしまった女に腕を引かれ、望まれるままに唇を重ねた。

ベタリと纏わりつくグロスの感覚と、口内をなぞる舌の感覚が好きだ。
次第に乱れて行く呼吸も、ギュッと胸元を掴む手の感覚も。

その快楽にも似た感覚が好きなだけ。
だから相手は特に拘らない。同じモノを共有出来る相手なら誰でも良い。

軽いと軽蔑されようが、最低だと罵られようが、俺にとってはその程度のことだった。


いつからだろう。そんな風に思うようになったのは。

学生時代は、それなりに「恋愛」というものを楽しんでいた気がする。
まぁ、そんな気がするだけで、実際どうかと問われれば断言は出来ないけれど。

女が嫌いなわけではない。
嫌いではないけれど、それ以上に仕事が好きだ。

そう言えば、少しは格好がつくだろうか。
< 1 / 386 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop