Secret Lover's Night 【連載版】
数時間の旅を終え、お土産を買えなかった代わりに近くのケーキ屋でプリンを買って家へ戻る。いくら急いでいようが、これだけは外せないのだ。

「ただいま」
「にーちゃん!お帰りっ!」

玄関の扉を開いて真っ先に駆け付けたのは、晴人の帰りを首を長くして待っていた悠真だった。

「おぉ、悠真。久しぶりやな」
「ちょくちょく帰って来とるんやったら声かけてくれたらええやん!」
「悪い、悪い。帰ってもお前と遊んでる暇は無かったんや」
「そんな寂しいこと言わんといてや!次写真集いつ出すん?俺、絶対買うから!」
「買わんでも送ったるがな」

相変わらずだ…と苦笑いをしながらブーツを脱ぎかけ、晴人は千彩の靴が無いことに気付く。

「おい、悠真。俺の彼女は?」
「あっ、ちーちゃんは…えっと…」

不自然に言葉を濁した悠真を睨み上げ、晴人はグイッとプリンの入った箱を押し付けた。

「どこや。返答によったら智人しばく」
「いやっ、あの…病院」
「病院?」

バツが悪そうに頭を掻く悠真は、智人に堅く口止められていたのだ。

ぐったりとした千彩を抱え、智人は「お兄には言うな」と言って一時間ほど前に家を出た。電話がかかってこないということは、まだ病院に居るのだろう。どうしようか…と思案する悠真の腕をグッと掴み、晴人は声を低くした。

「どこの病院や」
「いや…っ」
「言うといた方が身のためやぞ」
「海浜…病院」
「海浜?何でそんなとこ連れて行ったんや」

海浜病院といえば、一応総合病院ではあるけれど、受診を希望する患者が精神科にばかり詰め寄る病院で。また何かあったか…と、晴人の気分は重くなった。
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