Secret Lover's Night 【連載版】
「はよ帰って来いよ、兄ちゃん」


いつから付き合っていたのか。本当に二人で東京へ行ってしまうのか。そんなことはどうでも良かった。


ただ、認めたくない。
諦めたくない。


その一心で。玄関の扉を閉めたと同時に泣き崩れた智人は、悠真を呼んでくれとだけ母に伝えて自室へ籠った。

何も語らず、反対も賛成もせず。ただただベッドに仰向けに寝転びながら声を殺して泣き、悠真と一晩を共に過ごした。朝を迎える頃には、涙も枯れて。そんな智人に悠真は言った。

取り敢えず、何があったん?と。

あまりに間の抜けた言葉に、智人は苦笑いで返すしかなくて。事情を説明した後に「にーちゃんが行ってまう!」と泣き出した悠真を宥めながら智人は思った。

あぁ、結局俺はお兄には勝てない、と。
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