Secret Lover's Night 【連載版】
「ここで諦めるんはナシな?俺らもっとやれるって」
「もっと…な」
「その誕生日プレゼント、絶対受け取りに行こうや」
「俺の誕生日プレゼントやけど、な」
「硬いこと言うなや。俺ら一心同体やろ?」
「そんなもんになった覚えはないけどな」

ピシャリと拒絶する智人と、それに大袈裟に落胆する悠真。十年近く経っても、二人の関係は変わらないままだった。

「俺、別に千彩のこと好きちゃうからな」
「またまたー」
「俺の恋人はギターや。それに俺はロリコンちゃう」
「可愛い思うけどなー、ちーちゃん」

千彩を否定するわけでも、千彩に対する晴人の想いを否定するわけでもない。ただそれだけは、悠真にも晴人にも「勘違いだ」と伝えたい。好きは好きでも、意味が違う。曖昧だから上手くは伝えられないけれど、「恋心」とは確実に違う。

「アイツは、お兄と約束してんねん」
「約束?」
「一緒に幸せ守ろうって。だから、そう出来るように俺がアイツを育ててやってるんや」
「へぇ」
「躾けやな、躾け」
「人間やで、ちーちゃん」
「んなら…子育てか」
「独り身やのに?」
「ええやろ。いちいちツッコむなや」

むっくりと体を起こした智人は、悠真の頭を引き寄せてコツンと自分のそれとぶつけ、照れくさそうに言った。


「俺は晴人を超える。絶対な」


新たな決意を胸に、数年前と同じく二人で部屋に籠る夜。晴人の呼びかけにも母の呼びかけにも応じず、深夜近くに戻った父の呼びかけにも応じなかった。


何か特別なことをしていたわけではない。ただ二人で過去を語り、夢を語った。笑い合いながら、時には涙ぐみながら。

こうして二人の夜は更けて行く。
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