Secret Lover's Night 【連載版】
「もう帰るの?」


もっともっとと強請る女に別れを告げ、ビルを出る。

ここ数日鬱陶しく降り続く雨に手放せなくなった傘を広げると、パラパラと軽い音が鳴った。


雨は嫌いじゃない。
特に、こんな風に傘の上を踊る大粒の雨は。


繁華街の喧騒の中でも、耳を澄ませばちゃんと聞こえてくる。ここに居るんだ!と主張するようなその音が好きだ。



ふと、本当に何気なく視線を遣っただけだった。

特別何かを探していたわけでもないし、そこに何かがあると思っていたわけでもない。何気なく視線を遣った、ビルとビルの合間。

けれど俺は、見つけてしまった。






探していた心の欠片は、そこに確かに在った。
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