灯火-ともしび-
電話を切って、ケータイをベッドの上に放り投げ、階段を降りる。


「小夏。」

「なぁに、お姉ちゃん。」

「小夏、人の髪の毛いじるの好きよね?」

「好き…だけど、どうしたの?」

「燈祭りの日、私の髪、何とかしてくれない?」

「え…でも祭りには行かないって…。」

「思ってたんだけど、行かざるを得なくなった。
浴衣は家にあったわよね。」

「うん…あるよ。あるよっ!お姉ちゃん、わたし頑張るね!」

「…あんまり張り切んなくてだいじょーぶ。
どうせ向こうだって期待なんか…。」


そこまで言って、ふとフラッシュバックする奴の言葉。


『大丈夫です。夏海さんが来てくれるだけで俺にとっては期待以上です。』


…期待を裏切るのは、私の信条に反する。
変なプライドが頭の中をちらついた。


「ま、外に出て恥ずかしくない程度にしてちょうだい。」

「任せてっ!わたし、頑張る!」


目をキラキラと輝かせて拳をぎゅっと握る小夏にあいつが被って見える。


…ちょっと不覚だ。
今日は水曜日。祭りまであと3回眠るだけでいいなんて考えれしまっている段階で、なんだか私の方が楽しみにしているみたいで。


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