野良神様の32分間




小さな身体。
鮮やかな着物。
艶やかな白髪。
見たことのない未確認生物に、季柚はただ驚くしかない。


まるで童話の世界に迷い込んだような感覚は、目の前の生物を前にして、より一層増すばかりだった。



「そう言えば、自己紹介がまだだったな。俺の名前は・・・・ない!好きな食べ物はラーメンだ!」

「あ、私もラーメン好・・・じゃなくて。貴方何者!?人間じゃ・・・ないよね、どう見ても」

「気になるか!教えてほしいか!」

「まァ・・・」

「そんなに聞きたいか!どうしよっかなァ?」

「じゃァいいです。さようなら」

「まままま待て!教えてやるから!!」

「・・・・」


小さな身体で引き止めようとする姿に、季柚は思わず笑ってしまった。


「何を笑っているんだ。失礼だぞ」

「初対面で人のコンプレックスを言う奴に言われたくない台詞ね」

「コンプレックス?・・・・あァ!でかいことか」

「2度言うな!」


怒鳴ると同時に立ち眩みがした季柚は、フラリと身体が揺れて神社の柱に手を置いた。


「お、おい。・・・大丈夫か?」


心配そうに見つめるその小人は、季柚の肩に飛び乗って、少し動揺したように言った。


「・・・大丈夫。ただの立ち眩み・・・だか・・・ら・・・・・・」

「わっ、と。おい!女!しっかりしろ!!おいっ!!」


目の前が真っ白になり、季柚はそのまま地面に倒れ込む。
ただ、意識が途絶えるまで、自分の名を呼ぶ声が、耳元で何度も響いていた。




(でも、何でだろう。)



この響きを、前に、どこかで聞いたことがあるような・・・




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