いじわるな君に恋をする



「やだっ…待って、朔弥!!」




私は裸足のまま家を出た




「朔弥っ…待って……ひくっ……行か、ないでぇ…」




朔弥は振り返らずに行ってしまう



その背中は段々小さくなり、やがて見えなくなった




朔弥…

朔弥…



「うっ……ふぇ…」




ただひとつのわがままも、聞いてはもらえなかった




朔弥に居て欲しい




ただそれだけの、わがままなのに




「っ……ひっ…朔弥ぁ…」




ただ、それだけなのに





朔弥は行ってしまった





朔弥…






私はもう、あなたの傍には居られないのだろうか…



もう、笑いかけてもくれないのだろうか…


わがままなんて、言うんじゃなかった


「うっ……わあぁぁあっ!!!!」





街灯の薄暗い光の下



その道には、私の泣き声だけがひびいていた







< 258 / 342 >

この作品をシェア

pagetop