あおぞらカルテ
花怜ちゃんの呼吸が止まったのは、その日の夜だった。

夜中まで医局に残って仕事をしていたオレは、突然のコールに嫌な予感がした。

その予感は当たってしまったんだ。

部屋にかけつけた時には、もう青白くなっていて、すぐにでも人工呼吸器をつなげないといけない状態だった。


「先生!気管挿管しますか!?」


あわただしく準備を始める看護師たち。

もう虫の息になろうとしている花怜ちゃん。


「…ご家族は…?」

「ちょうどいらっしゃいました!」


廊下の外に追いやられてしまっているご両親が目に留まる。

茫然とわが子の姿を見ているようだった。


「あの…お話があります…」


オレがそう声をかけたら、部屋の中から悲鳴に近い看護師の声。


「先生!早くしてください!」


心苦しかった。

けど、オレに託された花怜ちゃんの想いを無視できなかった。

握りしめたピンクの封筒を両親に差し出す。


「…花怜ちゃんから僕にくれたものです…」


ラブレターだと冷やかされた手紙は、実は…


「これは、リビングウィルです」
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