あおぞらカルテ
田尾先生は言う。

小畑には心がない、と。

もし自分が患者なら、そんな医者には診てもらいたくない、と。

そんなある日、また救急車で患者さんが運ばれてきた。


「92歳男性、自宅の納屋で農薬を摂取したようです。意識レベル300…」


それを聞いて、複雑だった。

心臓マッサージされている、ぐったりとしたおじいさん。


「ご家族は?」

「実は最近、奥様が亡くなられたそうで…身内はいないとの情報です」


明らかに、服毒自殺だ。

心肺停止から時間がたちすぎて、助けられない可能性がはるかに高い。

命が助かったとしても、きっと意識が回復することは奇跡に近いだろう。

そんな中、小畑は言った。


「挿管します!」


もちろん、それが正しいかもしれない。

命を助けるのが医者の仕事だから。

だけど、オレはその選択を正しいとは思わなかったんだ。


「小畑!ちょっと待て!」

「なんだよ?」

「挿管して…胃洗浄したとしても、助かると思うか?」

「わからない。助からないかもしれない」

「じゃあ、なんで?」
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