あおぞらカルテ
奈菜ちゃんの他にも、大屋先生の患者さんはいる。

他の患者さんたちは、みんな良くなって退院間近の人ばかりだ。


「薬でうまくコントロールできてますね。来週には退院できそうですから、夕方にご家族がいらっしゃいましたら、私から説明させてもらいますね」


大屋先生は少しだけ笑顔を見せて話す。

患者さんも笑顔だ。


「先生のお陰です。もうすっかり良くなったみたい」

「もう少しですからね。頑張りましょう」


理想とする光景はコレなんだ。

コレがやりたいんだよ!!

なのに…現実は全然違う。

奈菜ちゃんは完全に無視だし、オレも足が遠のくし、更に距離ができる。


「道重先生、奈菜ちゃんに何か言いました?」


看護師さんから言われる。


「食事も全然とれてないし、部屋から出て来ないし…前よりも表情が暗くなったみたい。どうなってるんですか?」


医者になって5日目、看護師さんから怒られる。


「微妙な年頃なんですから、軽々しく生死の問題を話さないでください!大屋先生も、ちゃんと教育してくださいね!治療方針が決まらないと、ナースサイドでもどう関わったらいいのか分かりませんし、ハッキリしてください」


できるもんならハッキリさせたいよ。

彼女の言うとおり退院させてやりたい。

でも、医者として見殺しにはできないから、だから悩んでるんだよ。

大屋先生は何考えてんのかよく分かんないし…。
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