薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
「確かにそうかもしれない。
だからと言って関係ないふりは出来ないよ。
だって……俺が助けた命だ。そう簡単に死なれるようなことが起きては、俺の施しが無駄になってしまう」
「本当に結斗様はお優しいのね。これでは傍にいる私達が苦労するわね」
「御免、静寂」
「……別にいいわよ」
後ろを向く静寂。そのまま早足で去って行く。恐らく道場に戻ったのだろう。俺は部屋へ向かうとしよう。
そして少しばかり反省しよう。さすがにあれは櫻澤家次期当主としてはあまりにも優しすぎた気がする。何故かあの少女の許では優しくなってしまう。強くならねばならない。