薄紅の花 ~交錯する思いは花弁となり散って逝く~
結斗が部屋に戻った直後、着信音が鳴った。
それは携帯購入の際に設定されたもので彼の趣味が感じられない物だ。
彼の髪に似た黒い携帯電話を床から広いあげ、通話ボタンを押す。
『結斗、ごめんね。
今日用事があって……』
「それさっき聞いたよ、静寂《しじま》。
それよりわざとでしょ。藤岡紫音と会わせたの」
『あ、ばれてたの。
まぁ、そりゃそうか』
「それより明日は学校行くから手配しといて」
『そう分かった。
じゃあね、結斗様』
静寂《せいじゃく》な中、携帯を閉じる音が鳴り響く。
そんな中、結斗は今日訪れた少女たちの姿を頭で思い浮かべ、微かに笑った。